【来日予定メンバー】
SNAKE / スネイク (Vo)
AWAY / アウェイ (Ds)
CHEWY / チューウィー (Gt)
ROCKY / ロッキー (Ba)

“世界無形文化遺産的音楽集団”
カナディアン・テクニカル・スラッシュメタルの代名詞
ヴォイヴォド が迎え撃つ!

(新譜解説より)

本作「THE WAKE」はVOIVODにとって通算14枚目のオリジナル・アルバムであり、バンド活動35周年を記念するアニヴァーサリー・アルバムでもある。彼らのデビュー・アルバム「WAR AND PAIN」(1984年)をリアルタイムで聴くには間に合わなかったが、2ndアルバム「RRRÖÖÖAAARRR」(1986年)に衝撃を受けてすっかり彼らの虜になった身としては何とも感慨深い。当時の彼らは、ヘヴィ・メタル/ハード・ロックの世界で依然として異端とされていたスラッシュ・メタルというサブ・ジャンルの中でもひときわヘヴィでアグレッシヴでノイジーなバンドとして悪名を馳せていた存在だった。どのタイミングで彼らのことを認識したかによって、聴き手それぞれの中でのVOIVODというバンドの立ち位置は変わってくるはずだが、80年代の半ばにおいて、彼らはまさしくメタル・シーンにおけるアウトサイダーであり、スラッシュ・メタル・シーンにおいても特異な存在感を有するバンドだった。

まず言えるのは、彼らは“ 普通”のバンドでは全くなかった。METALLICA、SLAYER、MEGADETH、ANTHRAXといった今現在言うところのビッグ4、そしてその4組の次に位置するEXODUS、OVERKILL、TESTAMENT 等の音楽も当時のヘヴィ・メタルの基準からすると“普通”ではなかったが、80年代中盤から後半にかけて、彼らの後に続くように登場したスラッシュ・メタル・バンドの十中八九が、そういったバンド達から音楽面で多大な影響を受けていた(特に多かったのがMETALLICAとSLAYERのフォロワーだ)。あるいはヨーロッパのシーンに目を移せば、やはりDESTRUCTION、KREATOR、SODOM、CELTIC FROST等をお手本とするケースも多々見受けられた。

スラッシュ/スピード・メタルの第二波のバンド達が登場した1986~1988年頃にはスラッシュ・シーンにおいてもある種の“定型”“ 定式”“フォーミュラ”のようなものが確認出来るようになっていたが、スラッシュ・メタル第一波のバンドの1つとしてカナダから登場したVOIVODはその極端で奇抜で型破りなサウンドによって群を抜く存在であったし、第二波のバンド達が登場した頃にもVOIVODのスタイル及びサウンドの変遷をなぞれるほどに意欲的で実験性に長けたバンドはおよそ見当たらなかった。3rdアルバム「KILLING TECHNOLOGY」(1987年)と4thアルバム「DIMENSION HATROSS」(1988年)をリリースした頃のVOIVODは既にスラッシュ・メタルという枠をも超越、そのバンド名がもはや音楽ジャンルであると呼べるまでの域に達していた。やがてスラッシュ・メタル・シーンが拡大/飽和/衰退といった過程を経る頃にはVOIVODは彼ら固有の進取精神によって自らの創造性にメスを入れることを厭わず、果たして別の惑星のバンドといったような孤高の存在感すら放っていたことが今現在もはっきりと思い出される。5thアルバム「NOTHINGFACE」(1989年)と6thアルバム「ANGEL RAT」(1991年)の2枚をリリースした時期、ヘヴィ・メタルは60年代後半から現在に至るまでの全歴史の中でアルバム・セールスという側面において最大規模の支持を得ていたが、彼らVOIVODはそうしたバブル状態からも超然とした姿勢を貫き、自分達の創造性こそに注力していたこともまざまざと思い出される。

VOIVODの7枚目のアルバム「THE OUTER LIMITS」が出た1993年、ヘヴィ・メタル・シーンはその5年前の姿とはすっかり様変わりしており、80年代には世界中に数百数千という規模で存在していたスラッシュ・メタル・バンドのその殆どが姿を消してしまっていたが、VOIVODが生き残ったのはその類稀な豊かさを誇る創造性によって自らの音楽性を刷新していったからに他ならない。ここでいう刷新とは、単に何か別のことをやるとか、誰か他のバンドに似せるということと同義ではない。90年代初頭、PANTERAのスタイルを真似ようとしたバンド達やグランジ/オルタナティヴのブームに感化されてスタイルを変えたバンド達が多数いたが、そういった多くの風見鶏達とは全く異なり、彼らは彼らのバックボーンにあったプログレッシヴ/サイケデリック・ロックのルーツによって自分達の音楽を新たな段階に推し進めていく地力と才能と野心を兼ね備えていたのである。

「ANGEL RAT」発表時、ドニ“スネイク”ベランジェール<vo>、ドニ“ ピギー”ダムール<g>、ミシェル“アウェイ”ランジェヴァン<ds>、“ブラッキー”ジャン・イヴ・テリオール<b>という鉄壁の4人編成は既に崩れており、「THE OUTER LIMITS」はピエール・セント・ジャンというセッション・ベース・プレイヤーを加えて制作したアルバムだった。「THE OUTER LIMITS」はVOIVODサウンドの集大成とでも言うべき傑作に仕上がったが、バンドのラインナップは不安定なままであり、同作に伴うツアー後、個人的事情によりスネイクが脱退、VOIVODは存続の危機に直面することになった。

1995年、ピギーとアウェイはエリック・フォレスト<b,vo>を迎えたトリオ編成で活動再開、「NEGATRON」(1995年)、「PHOBOS」(1997年)、「KRONIK」(1999年)、「VOIVOD LIVES」(2000年)といったアルバムをリリースした。1999年、ツアー中のバス事故によりエリックが重傷を負うという悲運にも見舞われたが、1年に及ぶ懸命なリハビリの末に彼は復活、IRON MAIDENのカナダ・ツアーの前座に起用されてツアー活動に復帰した。そして2001年1月、バンドの歴史に一旦の区切りを付けるべく、ピギーとアウェイはエリックとのラインナップを友好的に解消した。

2002年、長年抱えていた個人的な問題を解決したスネイクがバンドに復帰する。そして80年代から親交のあった元METALLICAのジェイソン・ニューステッド<b>を迎えた編成でVOIVODは復活、2003年に再出発アルバム「VOIVOD」を発表した。2004年後半には彼らは11枚目のアルバム制作に取りかかったのだが、翌2005年夏、ピギーが進行性の結腸癌を患っていることが判明、癌は肝臓にまで転移しており、既に手のつけられない状態だった。2005年8月26日午後11時45分、ピギーは家族に看取られながら45歳という若さで急逝した。

ピギーの遺志によりバンドはアルバム制作を続行、ピギーの残したギター音源ファイルに他のパートを加えていくという方式で2枚のアルバムを完成させた。「KATORZ」(2006年)と「INFINI」(2009年)である。彼らはライヴ活動も続行、MARTYRのダニエル“チューウィー”モングレイン<g>を迎えた編成でツアーを積極的に行ない、2008年には『THRASH DOMINATION』に出演するために初めて日本を訪れた。その後、DVD『TATSUMAKI : VOIVOD IN JAPAN 2008』(2009年)、「WARRIORS OF ICE」(2011年)、「LIVE AT ROADBURN」(2012年)といったライヴ作品を続々とリリースした彼らは、スタジオでの録音作業再開を決断する。新たに陣営に加わったチューウィーとのコンビネーションがあまりに素晴らしく、「このラインナップでVOIVODらしいものを作り続けることが出来る」との確信を得たからだった。チューウィーは12歳、13歳頃からのVOIVODのファンであり、ピギー独特の不協和音コードや奏法などを研究してきた人物だ。「ピギーの代わりなど見つからない」と半ば諦めていたVOIVODの面々にとって、チューウィーとの出会いはまさに運命的なものだった。そして2012年、13枚目のアルバムでありVOIVOD新章の始まりを告げるアルバム「TARGET EARTH」を発表した。

VOIVOD以外の何者でもない「TARGET EARTH」は世界中で絶賛をもって迎えられ、2014年には彼らは『THRASH DOMINATION』に出演するため二度目の来日を実現させている。その後、彼らは日本でもリリースされた「POST SOCIETY」(2016年)を始めフィジカル/デジタル/スプリットなど様々な形態でのシングル及びEPをリリースしながらツアー活動を続けていた。2014年、様々な意見の相違を理由にブラッキーが再離脱、ブルーズ畑で主に活動していたロッキーことドミニク・ラロックが加わって態勢を建て直した。また新たな4人編成で制作、そしてこのたびリリースされる運びとなったのが本作「THE WAKE」である。

新加入のチューウィーがVOIVODサウンドにいかに馴染むのか、そして何を提示してみせるのか、そういったところが前作「TARGET EARTH」に寄せられた注目点だったが、チューウィーはあたかも亡きピギーの化身であるかのように、VOIVODのギター・サウンドがどうあるべきかを具現化してみせた。「新生VOIVOD」「VOIVODの再生」といった表現もどこか回りくどいとも思えるほど、あのアルバムはVOIVODによる紛れなく純然たる新作だった。そして本作は、現編成のVOIVODが、また新次元に到達したことを決然と示し出す会心作として完成した。

スピード/スラッシュ・メタルの出自とサイケデリック・ロックのルーツを併存させた“Obsolete Beings”、KING CRIMSON的なギター・リフと初期PINK FLOYD流のヴォーカル・アプローチを軸としながら起伏に富んだ曲構成で聴かせる“The End Of Dormancy”、ギター・リフやベース・ライン、メロディ/ハーモニー等が「NOTHINGFACE」でのアプローチを想起させる“Orb Confusion”等を並べた序盤の流れがまずは圧倒的であり、その前半の勢いを、変則的なリフ/リズム・ワークが特徴的、中盤にオーケストレーションを導入した“Iconspiracy”、本作中で最もインテンスでアグレッシヴかつプログレッシヴな質感にも溢れる“Spherical Perspective”、変拍子によるジャズ/スラッシュ/サイケデリック・ロック・ナンバー“Event Horizon”という中盤における幻惑的で不可思議な構成が継いでみせる。こうしたアルバム至上主義と言うべき構造性は彼らが70年代から聴いてきたプログレッシヴ・ロックの名作群を意識したものに違いない。そして随所にオーケストレーションを施した終盤、スラッシーな攻撃性とサイケデリックな浮遊感との些かアンバランスに聞こえる併存が不思議な引力を醸成する“Always Moving”、パンクやスラッシュを素地とするVOIVODのフィルターを通した上でのプログレッシヴ・ロックの再構築と呼ぶべき“Sonic Mycelium”という2曲によって圧巻のドラマティシズムを紡ぎながら大団円へと進んでいく。

なお、本作はボーナス・ディスク付きの2枚組という構成であり、DISC2にはHAWKWINDのカヴァー曲“Silver Machine”を含む2016年発表のEP「POST SOCIETY」の全曲、そして2018年2月の『70000 TONS OF METAL CRUISE』出演時のライヴ音源6曲が収録されている。

「THE OUTER LIMITS」を超える新作の登場、と思わず言い切りたくなる会心作である。ピギーがこの世を去った時、2018年にまた新たな傑作がVOIVODから生み出されることになると誰が予想しただろうか。このアルバムを聴いての感想をピギー自身から是非とも聞いてみたい。

2018年8月5日 奥野高久/BURRN!

 

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